« 「限界集落」ということ | トップページ | 道州制論議はいいけれど »

2007.05.14

ふるさと納税を考える

 田中康夫前長野県知事が、泰阜村へ住民票を移したとき、彼が、がんばっている自治体を応援したい、つまり、自分の税金をその自治体へ納税したい、という趣旨の発言をした。長野県には、市町村が多く、そのすべてががんばっているので、特定の自治体だけをひいきするような発言で、市町村関係者からは顰蹙をかったし、この住民票騒動は、最終的には、司法の判断も、過去の判例を踏襲し、混乱しただけで終った感じがする。しかも、田中支持者でも、この行動を是としなかった人も多かったことは、知事選挙結果からも推測できる。
 住民票問題は、住民票のあるところと税金を納める自治体とは、本来同じあるはずだが、そうはいかないので、地方税法の解釈では、判例もあり税金納める場所と住民票とは違ってもいいように、なっている。私は、税金の仕事をしたこともあり、そのことはよく承知している。
 田中康夫氏は、法学部出身でありながら、法律を学ぶことや、法律をどう解釈するか、といったことを考えない知事であった。彼は、自分の意思で、住民票を泰阜村へ移し、そこへ税金を納めるということができない、ことがおかしい、と考えたようである。私は、前述のとおり、わかっているが、彼は「そんなことはおかしい」という。おかしくても仕方ない、それが行政の解釈、つまり、税金の世界での常識である、これが我々普通の行政人が考えること。
 彼は、その当時の記者会見で、おばあちゃんがいる自治体へ、初恋の人がいた自治体へ、応援したい自治体へ、自分の税金を納めるようにしたっていいじゃない、というような話を何回もしたり、書いてもいた。そのことがあって、一部政治家の間では、ふるさと納税いいじゃないか、という話も出ていたようである。
 今回、菅総務大臣が、それを言ったことにより、参議院選挙向けではあっても、にわかに「ふるさと納税」が脚光をあびることになった。農山村出身者が、高校まで地元で消費し、税金を納めるようになると都市へ行く、その税金の一部を故郷へ、この考え方は、理解できる。ただ、泰阜村のような規模で考えると、それによって、村の財政が立ち直るような効果は期待できないだろうと思う。また、税金の仕事をした人間として考えると、制度をつくることが極めて難しいだろうとも思う。そんなことで、このふるさと納税の効果は、都市と地方をつなぐ、思いやりの心を醸成し、日本の国家づくりには役立つ政策だと考える。これを地方への税源移譲と結びつけるのは早計だと思うがいかがだろう。地方財政を支援するのなら、国家レベルできちんと税金を集める、いまの人口偏在では、都市にたくさん集る。それを地方交付税のように、配分する方法が一番である。
 もし、制度化するならば、東京で10万円の地方税を納める人が、一万円を泰阜へ納めたら、東京でその一万円を税額控除する方法が考えられる。他にも方法はあろうが、難しさが先に予想される。これも私が公務員だからかもしれない。
 田中康夫氏の行動は、世の中の常識を知事自ら覆すようなもので、多くの批判を浴びたが、もしかしたら、ふるさと納税を考える出発点になっているのかもしれない。知事みずから、非常識な行動で挑戦することなど、私の頭にはないしできないが、彼はそんな意味で市民活動派のまま知事をやったのであろう。
 田中氏去ったあと、私は村長として、村井新知事にお願いしべき事はお願いしているが、村井知事の人柄で、温かく接していただき感謝している。そして、静かな村長生活に戻っているが、このふるさと納税で、田中康夫氏の「そんなのおかしい」という視点も、忘れててはいけない、村長の資質だと思った次第である。

11:13 午前 | 固定リンク

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/21398/15065669

この記事へのトラックバック一覧です: ふるさと納税を考える:

» 住宅ローンアドバイザーについて 住宅ローンアドバイザーを利用しよう from 住宅ローンアドバイザーについて 住宅ローンアドバイザーを利用しよう
住宅ローンアドバイザーは、住宅購入のときに利用する住宅ローンについて適切な情報を提供する相談役です住宅ローンアドバイザーとは、住宅金融普及協会または金融検定協会が認定試験を行なっている任意資格です住宅ローンアドバイザーとは、住宅購入予定者・借り換えなど購入後の方々向けに、さまざまな住宅ローンについて適切な情報を提供するアドバイザーです... 続きを読む

受信: 2007/05/14 12:20:48

» 地方の衰退【田舎暮らし白書】 from 田舎暮らし白書
先日「日本のこれから」というNHKの番組をみた。今回のテーマは「地方の衰退」。ただでさえ出生率が低下している中でさらに都会への人口流出が止まらない田舎の現状について考えるには良い番組だったと思う。... 続きを読む

受信: 2007/05/24 10:31:23

» 住宅ローン:日生編 from 住宅ローン&住宅ローン借り換え
住宅ローンについて、保険会社の日生からも住宅ローンが出てますので、今回じっくり見... 続きを読む

受信: 2007/06/23 10:17:19

コメント

 こんにちわ。いつも読ませてもらっています。
 私もふるさと納税の話が出て、同じ思いで聞いていました。けど難しいと思っています。泰阜村でふるさと基金を創設されましたが、あの制度で税制がより優遇されるような方法って考えられないものかなと思っています。

投稿者: 若井敏子 (2007/05/23 12:17:30)

 こんにちわ。いつも読ませてもらっています。
 私もふるさと納税の話が出て、同じ思いで聞いていました。けど難しいと思っています。泰阜村でふるさと基金を創設されましたが、あの制度で税制がより優遇されるような方法って考えられないものかなと思っています。

投稿者: 若井敏子 (2007/05/23 12:18:17)

コメントを書く